**おしどり**

 昔、あるところに猟を生業としている男がいた。決して腕が悪いわけではなかったが、ある時獲物に恵まれない日が続いた。
 その日も朝から何も捕ることができず、夕暮れに家路についた。家の近くの川に差しかかった時、つがいのおしどりが泳いでいるのを見つけた。
 つがいの鳥、それも特に雌雄の仲が良いとされるおしどりを捕るのは気持ちの良いものではなかったが、今晩からはとうとうひとかけらの食べ物も口にすることができない。男は弓に矢をつがえ、そして放った。矢は雄に当たり、雌は川の葦の間に逃げ込んでしまった。
 男はおしどりを持ち帰り、しばらくぶりに腹を満たすことができた。

 その夜、男は不思議な夢を見た。
 自分の枕元に美しい女がひとり立ち、ぞっとするほどうらめしげな目で男を見ながらすすり泣いている。
 男は最初気味悪く思ったが、だんだん女のあまりの悲しみに自分も胸をつかれるような気持ちになっていった。女はやがて男に向かって「なぜあなたさまは私からあの人を奪ったのです」とうらみごとを言った後、「明日、川においでくだされば私の悲しみが分かりましょう」と言うとすうっと消えた。

 翌日、男が川に行くと雌のおしどりが葦の間から泳ぎ出て来た。
 おしどりは男の目の前で、自らのくちばしで胸を突いて息絶えてしまった。男は自分の罪深さを知り、仏門に入ったという。

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 よく「おしどり夫婦」とか言いますが、実際のおしどりはパートナーを変えることもあるそうです。やっぱり相性はあるのですね〜。
 
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